私の人生を救ってくれた書 「運命を拓く」(中村天風)

私にもこれまで何回かの人生の谷の時期というか苦難の場面がありましたが、それを乗り越えてこられたのはある一冊の本のおかげです。それは故・中村天風先生の「運命を拓く」(講談社文庫)という本です。 

この本を座右の書として10年間鞄にいれて常に携帯し折りに触れ何回も何回も読んでいました。特に前職のサラリーマンであったとき、もう死んでしまうかというようなしんどい時期がありその時は毎朝の通勤電車でこの本を読んで勇気を貰って生きていくことができました。ずっと携帯し繰り返し読んでいたので日焼けしたような褐色の色になりボロボロになってしまい、今の持っている本が2冊目になります。

この本には「人生の一切は自分の心が作る」と書かれており、自分の心を積極的に保つことがいかに大切であるか、そしてそれをどのようにして実践していけばよいか書かれています。

それまでは心の運用についてなど考えたこともなかったような私でしたが、この本を読んでいかに心というものが人生、または健康に大きな影響を与えているかを知ることができました。

また、宇宙には「宇宙霊」という無限のエネルギーがあり、万物はそれによって構成され生物は生かされていることを知りました。

(※「宇宙霊」とは中村天風先生の表現で、「宇宙エネルギー」でも「無限エネルギー」でも「天地自然の気」でも言い方は何でも良い。)

この無限のエネルギーを取り入れるための鍵は積極的な心の状態にあるという人生を生き抜く上で極めて重要な真理を知ることができました。

この本と出会うまでの私は人に愚痴をこぼしたり、人の悪口を言ったり、そんなことが平気でまるで汚物で一杯のドブのような心だったのですが、言霊という言葉が持つエネルギーのことを知り、それからは愚痴や悪口は口にすることはなくなりました。

会社でもなぜか自分ばかりトラブルに巻き込まれていました。「どうして俺の人生はこんなにいつもトラブルばかりなのだろう。」とその当時思っていました。そのせいでいつも忙しい、感覚的には人の倍働いている感じでしたが、それもトラブル処理という後ろ向きのものが多くてちっとも生産的ではありませんでした。

心がすさんで汚れた状態だったので、いつもホラー映画ばっかり見ていたのを覚えています。今は全く見たくもないし、映画を選ぶときは自分への影響を考えた上で選択しています。

まだまだ未熟な私ですがそれでもこの本を知る前と後では180度人間が変わったと言っても過言ではありあません。
人間なのでどうしても時にはネガティブな感情も去来しますが、それでもそれに飲み込まれてしまうことはあまりありません。
これも中村天風先生のおかげです。
中村天風先生は1968年に亡くなられていますので、生前にお会いすることができませんでしたが生きていれば是非ともお会いしたかった人です。

中村天風先生は昭和の戦中・戦後の激動期を生きた昭和の哲人で、ヨガのマスターです。戦中は軍事探偵として活躍していましたが、その後奔馬性結核という当時の死の病にかかり世界の療法を求めてアメリカやフランスに赴きました。著名な療法家と会うも結局その病を癒すことはできませんでした。失意のどん底で日本に帰る船の中でヨガのマスターであるカリアッパ師と運命の出会いがあり、カリアッパ師に連れられてヒマラヤのふもとカンチェンジュンガで修行。修行の過程で自然と病も癒え、そしてついには「自分の生命は大宇宙の生命と一体である」という悟りの境地を得ることができました。その後日本に帰国、大企業や銀行の重役などを歴任した後、突如としてそれまでの地位名誉の一切を放棄し、大道説法を始めました。それを当時の原敬首相が見出し政財界の多くの人がその哲学に感銘し師事を仰ぎ、その名が広まっていきました。その後財団法人天風会を創設し、心身統一法を広めました。

中村天風先生の哲学に師事した著名人には錚々たる面々が名を連ねています。下記はそのほんの一部です。

・      松下幸之助(松下電器〔現パナソニック〕創業者)
・      稲盛和夫〔京セラ・第二電電〔現KDDI〕創業者〕
・      永守重信(日本電産創業者)
・      宇野千代(作家)
・      双葉山(横綱)
・      後藤新平(政治家)
・      尾崎行雄(政治家)
・      東郷平八郎(元帥海軍大将)
・      山本五十六(元帥海軍大将)
・      浅野総一郎(実業家)
・      広岡達朗(プロ野球選手)

なかなか中村天風先生の魅力や人間の大きさはこのような紙面では表現することができないのですが、ご興味がありましたら是非読んでみて下さい。
「運命を拓く」という本は文庫で出ていますから手に入りやすいです。
その他にも多くの書が発行されています。
「運命を拓く」は入門編でさらに深い知識はその他の書に詳しいです。
私も随分読みました。 

本というのは合う合わないがありますから、もちろん全ての方がこれに感銘を受けるとは思ってはいませんが、それでも当時の私のような境遇で苦しんでいる人がこの本をきっかけに力強く生きていくことができるようになればと思い、ここに一稿を記した次第です。

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