脱力して生きる


力とは一体何だろう?

ウェイトトレーニングがブームなのでしょうか、健康維持のために勤(いそ)しんでいる人が多いようです。
ここでいうウェイトトレーニングは、バーベルやダンベル、専用のトレーニングマシンを使用し、筋肉の増量を目的とする鍛錬法と定義します。
周りにもジムに通っているという人は少なくないし、街を見ても肥大した筋肉をアピールする衣装を着ている人をよく目にします。

最近ではメジャーリーグ(MLB)で活躍している大谷翔平選手やダルビッシュ有選手がウェイトトレーニングで肉体改造をして活躍しています。
動画でも彼らがウェイトトレーニングをしているシーンが流れています。
相当の負荷のあるトレーニングをしているようです。
そのトレーニングのおかげで、大型のメジャーリーガーを凌ぐ程の体格を武器に、名だたるメジャーリーガーを撫で斬りにする活躍ができています。
それに鼓舞される日本人もたくさんいるのではないでしょうか。

大谷翔平選手やダルビッシュ有選手は、確かに素晴らしい活躍をしていますし、それに異を唱えるつもりはありません。
今回は、ムキムキの筋肉の力だけに依(よ)らない、いわば「脱力と身体の使い方」について考察してみます。

左から大谷翔平、山本由伸、ダルビッシュ有

大谷翔平選手やダルビッシュ有選手と対照的にウェイトトレーニングをしないアスリートもいます。
それが、大谷翔平選手と同時にロサンゼルス・ドジャースに入団した元オリックスの山本由伸選手です。
山本由伸選手は、日本一とも言えるNPB(日本プロ野球)の代表的な投手です。

その輝かしい実績は

2021年にNPB史上8人目かつ令和では初の投手5冠を達成、翌2022年にはNPB史上初となる2年連続の投手5冠を達成した。
2021年から2023年にかけてNPB史上初となる3年連続の投手4冠を達成、歴代最長タイとなる3年連続で沢村栄治賞・MVPを受賞した。

【出典 Wikipedia】

という圧巻の成績です。

山本由伸選手とドジャースの契約は12年間で総額3億2500万ドル(発表時のレートで約463億円)という巨額の契約、“二刀流”大谷翔平選手の10年総額7億ドル(約1015億円)は下回りますが、MLBの投手としては史上最高総額です。
しかも山本由伸選手はメジャーの経験はありません。
それなのに投手として史上最高の契約を結んだのです。

その昔、落合博満選手〔燦々(さんさん)たる3度の三冠王!〕が年俸1億円を達成した時分を知っているので、ため息が出るような金額に隔世の感があります。

契約金も驚きではありますが、驚くのはこれだけではありません。
それだけの投手でありながら山本由伸選手はウェイトトレーニングをしないのです。
実際、上記のように大谷翔平選手やダルビッシュ有選手と並ぶといかにも体格が見劣りします。
まぁ、これだけ見ると、失礼ながら「一般人のファンかしら?」という感じです。

300㎏ですが、あなたは持てますか?

なぜ、山本由伸選手は時流とも言えるウェイトトレーニングに背を向けたのか?

2020年のオフシーズンに昔の女性が300㎏の米俵を担ぐ写真を見て

「担げるの?って思うじゃないですか。コツを知っているから持って運べる。人間にはそれだけの力があるはずなんです」
「筋肉じゃない。自分の体の重心の位置を明確にすることが大事。力で持ち上げているわけではなく、うまく乗せている。投げるのも一緒だと思う」

と発言しています。
筋肉を増やすのではなく、身体の使い方を極めなければと考えたのです。

ウェイトトレーニングを重ね、スポーツのパフォーマンスを上げたアスリートがたくさんいます。
しかし、その一方、ウェイトトレーニングでムキムキの身体を作ることに懐疑的な人もいます。

例えば、今年MLB(メジャーリーグ)からNPB(日本プロ野球)の横浜DeNAベイスターズに復帰した筒香嘉智選手もそうで、彼はウェイトトレーニングをしません。
野球選手は、昔はウェイトトレーニングをしていませんでした。
それなのに化け物みたいな選手がいたものです。
前人未到の400勝(20勝×20年!)を上げた金田正一投手がそうです。
今は1年ですら20勝も勝利をあげられる投手はいません。
また、日本シリーズ7試合中5試合に先発し、4完投という離れ業を成し遂げた稲尾和久投手は、なんとシーズン42勝(1961年)のNPB最高記録を残し、「神様、仏様、稲尾様」と呼ばれています。
今では中5日が当たり前の時代です。
7試合中5試合に登板するとは考えられない、超人としか思えません。
さらに、シーズン42勝って何でしょうか!?
金田投手といえば、走り込みを重要視し、引退後も現役選手を「走れ走れ」と叱咤し下半身強化の重要性を説いていました。

イチローさんはトレーニングのマシンは使っていましたが、いたずらに身体を筋肉で大きくするトレーニングはしていませんでした。
MLBでは突出した実績を残したイチローさんは、ご存知のように細い体型で、MLBの選手の中では見劣りします。
卓越した技術でヒットを量産する活躍に、日本人として誇らしいと思った人は多いのではないでしょうか。
イチローさんは過度の筋力トレーニングによってバランスを崩すことを危惧し、

「ただ筋肉を太らせるだけでは、神経の行き渡った筋肉でないと、意味がない」

と語っています。
それで思い浮かぶのは、ウェイトトレーニングでゴツゴツの身体にした元巨人の清原和博選手で、不振に喘いだ末に引退しました。

ヒクソン・グレイシー

総合格闘技の世界では、ブラジルのヒクソン・グレイシーが有名です。
グレイシー柔術の使い手であるヒクソンは、「400戦無敗」という称号で畏れられました。
日本を代表する格闘家でプロレスラーの高田延彦や船木誠勝を破ったのは記憶に新しいところです。
関節をたとえ決められても絶対にタップしないと言い切り、リングに上がる時は生きるか死ぬかという壮絶な決意を持っていました。
実際、船木戦では船木選手の打撃で眼底骨折の負傷をし、片目が見えなくなっていましたが、それを知られずに戦い続け、船木選手をチョークスリーパーで気絶させ逆転勝利をものにしました。
日本人が忘れたサムライのようなオーラを全開に異様な存在感を放つヒクソンは、日本人よりサムライだと評価されていて、私も憧れを抱いていたものです。
引退し今では65歳になりましたが、格闘家のキャリアを無敗で終えた数少ない人物です。


そのヒクソンは自然な生き方を志向しており、ヨガを取り入れた独特のトレーニングを行っていました。
海からエネルギーを貰うために常に海に近いところに住み、また来日した際には、大会の数週間前から長野の山小屋に家族を連れて山籠りし、そこで鍛錬を行うのが習慣でした。

ヒクソンは

「私はトレーニング器具なんて一切使わない。いつも自然の中で体を鍛えている」

と語り、山の中を走ったり川を泳いだり、木の枝で懸垂をしたりしていたのです。
瞑想して火の呼吸と言われる独特のヨガ呼吸法で、お腹をペシャンコにし内臓を自在に回していました。
試合前にスパーリングもしないで、よく強敵に勝ってきたと思わずにはいられません。
トレーニング法もかなり独特ですので、人間として興味が惹かれます。
引き締まっていますが決して筋肉隆々ではない小柄な体格で、それでも大柄な筋肉の鎧のような巨大な選手を締め落とすのは見ていて痛快でした。

日本人では総合格闘家の桜庭和志(さくらばかずし)選手が、「筋肉を付け過ぎたら弱くなったので筋肉を落とした」と語っていました。
桜庭和志選手は、申し訳ないけど総合格闘家の中では貧弱に見える身体をしていましたが、ごっつい凶暴そうな選手と闘って多くの勝利をおさめ、一時期失墜したプロレスラーの地位を復活させ、「IQレスラー」と称されました。

大相撲でも今はウェイトトレーニング全盛の時代ですが、果たして昔と比べて今の力士は強いのか疑問です。
元・小結の臥牙丸は非常に大柄な体格のジョージア出身の力士ですが、彼は一時期ウェイトトレーニングに凝ったものの、無駄だと悟りそれを止めました。
筋力を要する代表的な格闘技である相撲なのに、ウェイトトレーニングは要らないと決断したのです。
それよりは古くから伝わる四股やテッポウという基礎鍛錬を徹底する方が強くなると考えたのです。
そのような一見古くさいと見える指導をする親方はまだ少なくないようです。

最近はYouTubeでユニークな企画が目白押しですが、先日筋肉ムキムキのボディービルダーが幕下力士に相撲の挑戦をするという番組を観ました。
ボディービルダーはまるでポパイがほうれん草を食べた後のように、各所の筋肉が隆起してたくましくヘラクレスのようです。
一方の力士は脂肪に覆われたずんどう体型で、十両未満、相撲界でいえば下積みの階級です。
取り組み前からボディービルダーに勝負あったなと思わせるものでした。
しかし、いざ取り組みが始まるとボディービルダーはなす術もなく、いとも簡単に負けてしまいました。
フロックではなく、何番とっても同じ結果になりました。
要は、身体の使い方が違うということです。
パーツ毎の筋肉の大きさではなく、筋肉が有機的に調和していることこそが大きな力を出すのに必要なのです。

同じような企画で腕相撲の番組もありました。
それこそ漫画のキャラクターかというくらいの上半身ムキムキのボディービルダーが、半分くらいの腕っぷしのアームレスラーと腕相撲をする番組です。
これはどう見てもボディービルダー圧勝でしょうと予測しますが、ボディービルダーはまるで歯が立たないという散々の結果になりました。
これなども、目から鱗が落ちるような衝撃を覚えたものです。

双葉山
双葉山

相撲界ではウェイトトレーニングを好む多くの力士がいますが、昔は四股とテッポウしかしていませんでした。
それでも昭和の名横綱の双葉山は69連勝をしましたし(その間3年間無敗!)、歴史に名を刻む名横綱が多くいたものです。
では、双葉山は巨大で怪力を誇る力士かと言えばそうではなく、当時の力士の証言では筋力はむしろ弱かったと言います。
そのような話を聞くと「なぜなのだろう?」「なぜそれで強いのか?」と興味が湧くものです。

最近、長く相撲をやっている友人からその手の話を聞くことがあります。
アマチュア相撲では、片腕しかない障害者が大会で優勝したことがあるそうです。
氏は「相撲は筋力ではない」と言います。
片腕の力士が優勝したというのは何よりの証左です。

さすがに小柄な体格では無差別級の相撲界では生き残れないだろうと思いますが、さにあらず、100年近く前に活躍した大ノ里は身長が164㎝しかありませんでした。
164㎝といえば私と変わりません。
164㎝とは、私と変わらない身長で、チビの部類でしょう。
それなのに大ノ里は最高位が大関なのです!
私と同等の背丈でどうやって巨大の力士と闘っていたのか?興味が尽きません。
筋力では当然敵(かな)わないでしょう。
筋力ではない異質な力を使っていたのか?身体の使い方が違うのか?全く不思議でなりません。

このようにアスリートや格闘家の力について語ってきました。
素人的には、筋肉ムキムキになってゴッツイ身体をしている方がパフォーマンスを上げられる印象があります。
ウェイトトレーニングをして筋肉ムキムキの身体の方が強そうです。
私もかつてはそう考えていたのですが、その考えは根本的に変わりました。
人間というのは実に奥深いものです。
今はボディービルダーのような筋肉ムキムキの肉体は一見強そうに見えるが、機能的でない身体だと見るようになりました。

どのような種目でパフォーマンスを上げるか?その目的によって作る身体は違います。
ボディービルダーを否定するような表現をしましたが、ボディービルダーは肉体美を魅せるための身体なので、それはそれで素晴らしいのです。
一概に筋肉の増量に頼らないアスリートは、何か深いレベルで人間を探求している印象があります。
私は「小よく大を制す」という勝負が好きなので、どうしても身体の使い方がうまいアスリートに惹かれます。
そして、「力とは一体なのだろうか?」と思索を巡らすのです。

相手の力を抜く、無力化する

そうしたところ、元横綱の稀勢の里(現在は年寄・二所ノ関)が元横綱の貴乃花のことを語っていました。
稀勢の里は、大相撲引退後に早稲田大学大学院スポーツ科学研究科を修了しており、相撲界では毛色が少々違っている人物です。
「誰が最強の横綱か?」というテーマは相撲ファンの間でよく話題になります。
ファンではなく、実際に相撲を張ってきた力士にそれを尋ねると、一番強かったのは「貴乃花だ」と言う意見にまとまります。
その稀勢の里も最強は貴乃花だと言っている一人ですが、

「貴乃花は相手の力を抜くのが上手かった」

と語っていました。
力を極限まで振り絞って闘うのが相撲だと誰もが思いますが、相手の力を抜いて勝っていた横綱がいたのは驚きです。
貴乃花は他の力士が壮絶な稽古だと評するくらい厳しい荒稽古を兄の元横綱・若乃花と重ねてきました。
相当ハードな稽古を重ねた結果、最後には次元を超えた強さの領域に足を踏み入れていたのかもしれません。


相手の力を抜くというのは、現代のスポーツでは考えられないことです。
しかし、この境地を目指しているのが合気道や合気柔術です。
合気道というと、なかなかどのような武術なのか想像がつかないかもしれません。
基本的に相手の力を利用した円運動による投げや関節技を主体とした武道です。
Wikipediaには「合気道とは天地の“気”に合する道の意。合理的な体の運用により体格体力によらず相手を制することが可能であるとしている点が特徴」と載っています。
まぁ、しかし、体格体力によらず相手を制することができるとか、女性の護身術に最適だとか謳ったりしていますが、実際はそう簡単にはできません。
上位の段位を持つ者でも、相手の力を逃がしたり、円運動によって投げを打っていたりする者が多く、本物の合気である力を抜くという技を習得できている人はほとんどいないと思われます。

佐川幸義
佐川幸義 大東流合気柔術宗範

その中でも、本物と称されていたのが、故・佐川幸義さん(身長163㎝)で、佐川さんは90才を超えて死ぬ直前まで大の男達を思いのままに投げていたと、津本陽氏の「深淵の色は 佐川幸義伝」に描かれています。
佐川さんの身体を掴んだものは吹っ飛ばされる。
それだけではなく、セーターの端を掴んだだけで掴んだ人が数メートルも吹っ飛んでいくというのは、どのような物理的な法則が働いているのかまったく理解できません。
佐川幸義さんは、合気とは「敵の力を無にする技術である」と語っていました。

津本陽氏は日本を代表する歴史小説家で、剣道にも習熟したため剣豪小説も多く執筆していました。
それで、生前はいろいろと歴史上の人物について講演活動もされていたのですが、どうしても佐川幸義さんの話をしたくなってしまうらしく、その話になると興が乗ってしまっていたということです。
津本陽氏は、佐川幸義さんの技を目前で見て、度肝を抜かれた経験から佐川流大東流合気柔術に惹かれて止まなかったのです。
津本陽氏は佐川幸義さんのことを「孤塁の名人」と「深淵の色は 佐川幸義伝」という2つの作品に著わしました。
特に「深淵の色は」は無数の著作を出してきた津本陽氏の遺作となった作品です。
どうしても残しておきたいと思ったのでしょう。
私も津本陽氏は最も好きな作家の一人で、中でも「孤塁の名人」と「深淵の色は 佐川幸義伝」には驚きを覚え、夢中になって幾度も読みました。
ご興味がある方は是非本を手にしてほしいと思います。


[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

深淵の色は 佐川幸義伝 (実業之日本社文庫) [ 津本 陽 ]
価格:847円(税込、送料無料) (2024/4/25時点)


佐川幸義さんは、合気柔術という一つの術理を極める人生を全うするという生き方を貫いていて、弟子を多く取ることもなく、自身の修行にひたすら打ち込んでいました。
それ程の比類なき技を持っていたなら、都会のど真ん中で大道場を構えることも容易なはずですが、そのようなことをすれば道場経営や金策など不要な雑事が増えるとまったく興味を持ちませんでした。
津本陽さんと弟子の木村達雄さんが本にしなかったらまったく知られずに終わったことでしょう。
逆に、道場を幾つも構えて大々的にやっているのは、最早それはビジネスと化しており、武道としては形骸化していると見て良いのかもしれません。
佐川さんの生き方を見て、本物の中の本物は実際にほとんど無名で知られないものなのだと悟りました。
また、一つの術理の道を究めようとするならば、趣味など他の関心事があったらダメだと教わったものです。

大東流合気柔術の佐川幸義さんのような合気の技がどのような原理が働いているのかはまったくわかりません。
30年くらい前までは養神館合気道という流派に塩田剛三さんという達人がいました。
この方は空前絶後の合気道の達人で、身長154cm、体重46kgと小柄な体格ながら「不世出の達人」と評されました。
その道場には

対すれば相和す

と揮毫(きごう)された書画が掛けられていました。

それは、敵と対立すれば、すなわちお互いに和すという意味です。
塩田剛三さんはある時弟子に「合気道で一番強い技はなんですか?」と聞かれこう語りました。

「それは自分を殺しに来た相手と友達になることさ」

それは敵の攻撃心や怒りをたちまちにして鎮め、心をほどき、お互いに笑顔で握手することです。
それは相手の力を抜いてしまうことでもあります。
それが武道の奥義であり、力に対して力をもって制圧するという西洋流のやり方ではなく、敵すらも愛をもって和す、調和するという日本人特有の素晴らしい資質なのです。

脱力して生きる

翻(ひるがえ)って気功の世界ではどうでしょうか?
気を発する有名人といえば、漫画「ドラゴンボール」(鳥山明)のスーパーサイヤ人の孫悟空が世界的に有名です。
孫悟空は気を出すために渾身の力を込め大声をあげています。
孫悟空のみならず、作品中の仲間たちはみんなそうです。
もちろん、彼は漫画の中の人物なので実際にはいません。
ですが、気を発するには、赤ん坊が気張るかのような踏ん張り方をするイメージを世界中に定着させてしまいました。
それ以降、漫画の世界では格闘シーンがあると孫悟空のように「ウォー!!」と気を高め身体の周りにエネルギー体を帯びる描写が一般的になりました。

実際のところそれでも気が出ることは出るのですが、そのようなやり方では気功治療はできません。
お客様の横で孫悟空のように「ウォー!!」と奇声を発するわけにもいきませんし、それではお客様も全然リラックスできません。

良い気を出すためには、力を込めるのではなく、力を抜くことが重要です。
できる限り脱力して、神の力を通す導き手として自身を空っぽにすることが必要です。
ここではエゴも邪魔になります。
「この人を治していいカッコしたい」「この人を治療したら○万円入る」というようなエゴを抱いていたら、お客様を満足させられるような結果は得られません。
エゴも放棄して祈りに専心するのです。
それは脱力して神に委ねることに他なりません。

仙人師匠はよく「神にお任せだ」と口にします。
それは気功治療のみならず、人生で何が起きてもそれは神のリーラ(戯れ)の中で起こっていること、エゴで無駄に抵抗することなく一切を放棄して人生を神に委ねる姿勢が霊性修行では重要とされます

人生では様々な予想外の事態に見舞われます。
また人生の重要な分岐路に立ち、判断に迷うことも少なくありません。
そのような時に本当に「神にお任せ」でいられるのか?
どうしてもエゴが顔を覗かせ、自分の望む方向にハンドルを切りたいと思うものです。
しかし、それではダメなのです。
泳ぐときに力を入れたら沈んでいくように、人生でも執着やエゴを振りかざして力で乗り切ろうとすれば人生は沈んでいきます。
神にお任せの姿勢で臨めば、望ましい方向に流れていくのです。
そこは人智の及ぶところではないでしょう。

2020年から占星学的には風の時代に入ったと言われます。
それまで250年続いた地の時代から風の時代になることで、人々の意識が変わり、多様な価値観がひっくり返ります。
風の時代にはフワフワというのが一つのキーワードになります。
それはタンポポの種のようにフワフワと大空に舞い上がっていくイメージです。
フワフワという表現は親しみを持てますが、霊性修行的に言えば「神にお任せ」というのと同じで、抗(あらが)わず流れに乗って行くという生き方を表現しています。
力を抜いてフワフワと浮かんでいけば、人生はよい方向に流れていくのです。

関連記事

PAGE TOP