一般的に、死はこの世で最も恐ろしく、最大の苦痛があるものと考えられています。
だから、死は何としても少しでも先送りしなければならないというのが常識です。
そのため、たとえば病院でがんの余命宣告でもされようものなら、絶望の淵に追いやられてしまい、精神状態がおかしくなってしまう人も少なくありません。
それも確かに無理もありません。
私たちの日常の中には死に遭遇する場面が滅多にありません。
昔は、自宅で亡くなることが一般的でしたので、おじいちゃんやおばあちゃんが病気になり、枯れるようにして死んでいく様を誰もが見てきました。
しかし、今やほとんどの人が病院で亡くなる時代です。
日常で死に遭遇することは極めて稀で、中高年になっても身近な人の死を経験したことがない人もいるくらいです。
世の中には稀にではありますが、臨死体験をしたことがある人がいます。
臨死体験とは、一度死んであの世に向かうところで、またこの世界に戻って来た・・・いわば死へのプロセスが中断された体験です。
私の身近にもいますし、これまで診て来たクライアントさんの中にも臨死体験者が数名いました。
そして、面白いことに、皆が「死ぬのはこんなにも簡単なんだ」と口を揃えて言っています。
魂が肉体を離れた後に見る光景はそれぞれ違っていましたが、「死ぬことが簡単だったこと」「またこの世界に戻ってきたくなかったこと」は共通しています。
私たちは幾度も輪廻転生を経験しているので、本当は死というものを熟知しているはずですが、どういう訳かこの世界に生まれて来た時にはそれをすっかり忘れてしまっています。
死に方にもよると思いますが、大概のところ死の瞬間は、本当はとても気持ちが良いのではないかと想像しています。
多分、そうなのでしょう。
しかし、簡単にあの世に還って来られると、生を簡単に投げ出してしまう恐れがあるため、死は恐ろしいものとインプットされているのではないでしょうか。